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オーディオとノイズのノスタルジー [ヘッドホンアンプ]

オーディオというか再生音楽の原体験は、真空管ラジオのスピーカーから流れるソノシートの童謡だった。ステレオなんてものは家になかったが、レコードプレーヤーはあった。ターンテーブルはリム(アイドラー)ドライブ、針はセラミックピックアップだったと思う。父親は電気屋ではなかったが妙に器用で、ピックアップの信号を、真空管ラジオの裏に出ていた検波出力と電力増幅段の間に潜り込ませて、ラジオのスピーカーで聞けるようにしてくれたのだ。セラミック型ピックアップは出力電圧が高く、周波数特性上もフォノイコライザーが不要であることを知ったのはずいぶん後のことだ。

まともなステレオの音を聴いたのは友達の家が初めてだったと思う。パイオニア製のセパレートコンポからは、美しいカレン・カーペンターの歌声が流れていた。アナログレコードにはスクラッチノイズが付き物だし、録音機材はカセットテープなのでヒスノイズがある。アンプからもホワイトノイズが出る。スイッチを入れたときからの「シー」というノイズは当たり前だったし、それこそがこれから出てくる音への期待を誘い、透明感を一層引き立てているように感じたものだ。

自分でアンプを作り始めると、ハムやホワイトノイズ、DCドリフトなどに悩まされることになる。MCカートリッジ用のフォノイコライザーをCR型で組んだときは、盛大なホワイトノイズに打ちのめされた。もはや音楽を聴けるようなレベルではなかったのだ。オペアンプという選択肢もあったが、ICは内部の個々のトランジスタがプアで増幅段数や補償回路が多く、まともな音は出ない、というのが通説だった。

新しいものに飛びつかない性格が大いに発揮され、初めて買ったウォークマン(カセットテープのヤツね)は単三乾電池一本で動作する機種だった。ヒスノイズに加えて「ジー」というノイズが耳につく。電池が消耗してくると「ジー」音が大きくなるので、おそらく電源の昇圧回路が発するノイズだろう。こいつは入院したときの退屈しのぎに大いに貢献してくれたが、退院後ヘッドホンでの使用はあきらめ、FMトランスミッターと自作1.5Vカーアダプタによって、ラジオしか付いてない車のカセットステレオとして余生を送ることとなった。

音源がCDになり、録音機材がデジタルになり、ポータブルオーディオのデジタル化につれて、無音時のノイズは許されなくなった。いくばくかのホワイトノイズがオーディオ装置の息吹と感じるのは、ただのノスタルジーなのかもしれない。
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